※18Rではありませんが、そのような表現がありますので苦手な方は閲覧をお控え下さい。



「メルディ、本当にインフェリアに行くつもりなのか?」


1つのベッドの中、彼女の頭の重みを右腕に感じながら言った。
もう何回こうして自分の隣で眠る彼女を見てきただろう。
しかし決して2人はその身体で繋がれたことは無く、ただただこうして彼が彼女を守るように抱きしめて眠るだけだった。
それはハミルトにとって辛いことであり、また同時に何より安心することの出来る状態だった。
彼女はどうなのか分からないが、自分はもう何年越しでもってメルディのことを想い続けていたからだ。
しかし幼い子供のような顔で眠る彼女を目の当たりにしてしまうと、この辛い状態でさえも我慢できると思えてしまう。
安心し切った寝顔に苦笑がもれるのも嘘ではないが、それ以上にこの少女が安心して眠ることが出来る場所が自分の隣なのだということが嬉しかった。


「はいな。明日にはクレーメルクラフト完成する。そしたらメルディ、インフェリアに行くよ」


軽いまどろみの中、それでもメルディはキッパリと言った。


「なぁ、どうしてメルディがそんな事しなくちゃなんないんだよ。だってインフェリアだぞ?無事に辿り着けるかさえ分からないのに。大丈夫なのか」

「ガレノスが造ったんだもん。きっとダイジョーブ!心配することないな。それにこのままじゃ―」

「このままじゃ?」

「んーん。ガレノスが研究にはどうしても強い力を持った人が必要だよ。セレスティアはもう全部探したからな、後はインフェリアで捜すしかないよ」

「フィブリルだろ?でもそんな強い力なんて、あ、悪い」


珍しくしつこく聞いてしまったと口を閉ざす。
誰かがなにかをしようとする時、必要以上に口を出すのはあまり好ましくない。
それはこのセレスティアでは常識ではないか。
そう分かっていたが、メルディが未知の世界に旅立ってしまうのだという事を思うとどうしても黙ってみていることが出来なかった。
いくらあの有名なガレノスの発明とはいえ、彼女が目指す場所はあまりに遠すぎる。


「ハミルト、メルディがこと心配してくれてるか?」


彼にしては珍しく事を深く追究してくるので、メルディは目をパチパチと瞬いてハミルトを覗き込んだ。


「そりゃ、心配する」

「!!」


予想に反して彼が素直に答えたものだから、メルディは目を見開いてしまった。


「心配しないわけないだろ。インフェリアなんて反対側の世界に行くんだぞ」

「そっか、そだな。もしハミルトが行くことになってたら、メルディもすっごくすっごく心配になるもんな」

「――そんな顔するな」


言ってキュッと胸にしがみついてきたメルディの表情がみるみる崩れていくのを見て、ハミルトは僅かにたじろぎながらも彼女の頭を優しく撫でる。
繊細で優しく、弱い彼女はこういうことに非常に敏感に反応するのだ。


「ダイジョブ、メルディすぐ帰ってくるな」

「あぁ」


ここで『行くな』と言えたらどんなに楽になるだろう。
しかしその言葉を発することで、彼女を必要以上に苦しめることは明らかだったので何も言えなかった。
でも、何千年もの間交流の途絶えている異世界。
ただ空を見上げるとそこにあるというだけの、そんな存在でしかなかった世界にこの愛しい少女を1人で行かせなければならないのか。
そう思うとやる瀬なかった。


「待ってるからな。ちゃんと、帰って来いよ」


搾り出したに近い声はメルディの耳に優しく降って、コクンと頷いた彼女の瞳はほんの僅かだったが濡れていた。


「メルディが帰る場所はここ、アイメンだもん。だから必ず帰ってくるよ」

「そう、そうだな」


右腕に乗っていた彼女の頭を抱き寄せて、仄かに香る甘い香りを胸一杯に吸い込んだ。
その途端、溢れてくる優しくて切ない想い。


「俺のところに帰って来いよ」

「え?」

「メルディの帰ってくる場所はココだ。俺の隣だからな」

「はいな、うん。メルディの帰る場所はハミルトの隣」


抱き寄せられた頭を彼の胸にピッタリと寄せて、メルディは溢れそうになる涙を堪えた。
悲しいわけじゃないのに、辛いわけじゃないのに。
どうして今自分は泣きそうになっているのか、未だ感情に疎い彼女には見当もつかなかったが、それでも今この胸に溢れるものは決して不快な感情ではないと思う。


「明日には出発するんだろう?どれだけの負担がかかるか分からない。もう寝た方がいい」


ギュウと胸に顔を押し付けているメルディの頭を優しく撫でて、ハミルトは限りなく優しい声色で言う。
それを聞いたメルディは僅かに顔を上げて彼を見上げると、彼女らしくもない小さな声で返事をした。


「うん。・・・・・・なぁハミルト」

「ん?」

「・・・・・・んーん、なんでもないな」

「どうした?」


何かを言いかけて唇を結んでしまったメルディに、ハミルトは優しい声で促す。
しかしメルディは瞳を伏せたまま一向に口を開こうとはしない。それでも彼女の感情は額で不安定に揺れるエラーラを見れば一目瞭然だった。


「怖いか?」

「!!」


穏やかな。本当に穏やかな声でそう言われて、メルディはビクリと肩を震わせる。
『どうして?』と彼を見上げれば、困ったような顔をして笑った。


「エラーラ、不安な色してる」

「あ」


そうだった。額にあるこの宝石は自分達の感情を色で表してしまうのだった。
メルディは額のエラーラを指で確認し、所在無げに視線を泳がせる。


「分かってるよ」

「え?」


そんな自分にかけられた言葉は、いつもの彼らしい短い言葉だった。
見ていないようでしっかりと見ていてくれる、ほんの小さな感情の揺れさえも敏感に察知して助けてくれる、これは本当に幼い頃から変わらない彼の一面だ。


「分かってる、本当は不安に思ってること。少し怖いって思ってること、それでもメルディはインフェリアに行かなくちゃいけないって思ってることも」

「・・・・・・」

「分かってるから」


そんな風に言わないで欲しい。メルディはそんな風にも思ったが、それでも彼の底の無い優しい心に触れて苦しくて仕方が無かった。
これは自分でやり遂げなくてはいけない、どうしても自分がやらなくてはいけない。
そう思えば思うほどに、心を支配する不安感は募るばかりだったから余計にだろうか。


「ホンとはな、ちょっとだけ不安だよ。クレーメルクラフト、ガレノスが発明だから絶対にインフェリアに着けるとは思ってる。でも、インフェリアに行ってすぐフィブリルが持った人に会えるかどうかは分からないし」

「あぁ」

「時間、ないから」

「そっか」

「あはは、ごめんなハミルト。メルディちょっと弱気になった」


本当は、クレーメルクラフトが完成に近づくたびに思っていたこと。
逆さまの世界はやはり広いだろうし、歴史で教わったインフェリアンをそのまま信じるのなら、文化の違いや何やらで万事がスムーズに進むということは考えにくいことだろう。
それに、クレーメルクラフトもどこまでもってくれるか分からない。
ガレノスから『インフェリアに辿り着くまでは保証できるが、世界を超えるさいにかかる負担は想像以上であるだろうから帰りの安全までは保証出来ない』と言われた。
それでも、今世界を超える方法として考えられるのはガレノスの研究の賜物である、あの機械だけしかないのだ。


「良いんだよ、弱気になることは悪いことじゃない。悪いのは弱気になってそこから逃げてしまうことだろう?メルディは逃げようとしてないじゃないか。怖いと思っても、不安だと思っても、それでも踏ん張ってる。だから良いんだよ」


優しく頭を撫でる彼の掌が温かくて、メルディは泣き笑いにも似た声で相槌を打った。
自分がこの場から逃げずに踏ん張っているのは、他でもない自分の両親が世界の人々を苦しめようとしているからかもしれないからで、だからその子供の自分が何とか彼等を止めたいと思っているからで、言ってしまえば自分の両親がそんな事を引き起こしているのだと誰かに知られたくなくてやっている偽善にも似た行為なのかもしれないのに。
それでもやっぱり不安で怖くて。
自分の隣に居てくれる彼にそんな風に言ってもらえる資格なんて無いと思いながら、それでもその言葉は何よりも自分を支えて強くしてくれるものだとも思った。


「ありがとな。メルディもうダイジョーブ、さ、寝よかな」

「そうだな」


そう言って薄紫の明かりを消すと、見えるのはお互いの顔だけになった。
少し前までは暗闇のなかに居ることも、その中で瞳を閉じることも怖くて出来ずにいたメルディだったが、今ではこの瞬間、明かりを消した後にハミルトの顔だけが見えるその状況が嬉しいと思えるようにまでなっていた。
それは彼が限りない優しさで自分を包んで眠ってくれるからだろうか。
頭を撫でられながら眠るこの時間は、メルディにとって本当に大事なものだ。


「インフェリアでは、どんな風に星が見えるかな」


明かりの消えた部屋で、すぐそこにある窓から夜空を眺めてメルディが呟く。
彼女の頭を撫でながら自分も同じように夜空を見上げる。
空は今日も薄い雲に覆われていて、シンと冷えた空気の中で小さな星たちがチラチラしているのが見えた。
そうだな、と想像してはみるものの、歴史で習ったインフェリアは自分達の世界とは違いすぎていて自分の想像の許容量を遥かに越えてしまっているように思える。
考えるのを止めてしまったのを察したのか、メルディはからかう様に笑って胸に頭を押し付けてきた。
そんな彼女を愛し気な眼差しで見やり、彼女の存在こそが自分を満たしてくれる唯一のものだと心から思った。


「触れてもいい?」


ぼんやりと物思いにふけっている自分に、そんな風に戸惑いがちに言ったのはメルディで、限りなく優しい瞳で頷けば彼女はおずおずと自分の腕にしがみついてきた。


「あたたかい」


しがみ付くようにしてくっ付いて来るメルディに、ハミルトはどうしようもなく切ない気持ちに駆られてしまった。
彼女が今まで歩んできた路や彼女自身が選び歩む路を思うと、自分のことでもないのに涙が溢れて止まらなくなりそうだ。それに耐え兼ねて


「メルディ」


と囁くように名前を呼べば、メルディの指は自分の腕をギュと掴む。
瞬間折れそうに細い身体をキツく抱きしめれば、彼女は苦しそうに溜息を漏らした。


「ハミルト」


彼からの突然の抱擁に名前を呼ぶ。今までも彼に抱きしめられながら眠ったことはあったが、今のように突然、しかもこんなキツく抱きしめられたのは初めてだった。しかし何故かこんなキツい抱擁が心を落ち着かせる。
もっと抱きしめてほしい。
そんな風にまで思った。


「あ、ごめん」


名前を呼ばれたことに我にかえったのか、バッと身体を離すと視線を外されてしまう。


「なぜ謝るのか?メルディ、嬉しかったのに」


謝られたことが少し気にくわなくて、メルディは頬をプクリと膨らませた。
その一言に一瞬目を開いたハミルトだったが、次の瞬間には瞳にかかる前髪をそっと払いのけてくれた。


「触れてもいい?」


今度は自分がメルディに尋ねてみる、すると彼女は頬を朱に染めて笑った。
どこまで触れて良いのか、どこまで深くこの少女のことを想っていいのか、全てが未知で未体験で、未経験なハミルトには分からなかった。
それでもメルディをこの胸の中に閉じ込めてしまいたいと思うのは本当で、それどころか彼女を誰の目にも触れさせたくないとまで思うのも確かな真実だった。


「メルディ」


呼び慣れた名前でさえも煌びやかな響を持って、今まで事もなげに行っていた行動の1つ1つが信じられないくらい尊いものだったのだと感じさせられた。
名前を呼ばれて顔をあげたメルディの瞳を覗き込むように見つめると、恥ずかしいのか視線を逸らすように横を向いてしまう。
それでも再度彼女の名前を呼べば、メルディは再び自分の方を見て頬を染めるのだ。
何時からか時を止めてしまった容姿も、こんな時ばかりは輝くような女性の光を放ち、匂い立つような表情で見上げる瞳は妖艶な光を湛えて潤っていた。
仄かに染まった頬を両手で包み込み、溜息を漏らす彼女の唇を啄むように吸う。
角度を変えて口付けるたびに、彼女の細い肩が踊るように跳ねた。


「う、ん・・・・・・」


ほんの少し、本当にほんの少しだけ唇を離してメルディに呼吸を許す。
その拍子に濡れた誘うような声に、ハミルトはつい先程離したばかりだということさえも忘れてしまったかのように再度彼女の唇をキツく吸い上げた。
呼吸がままならず酸素を求めて開いたメルディの唇を割り、半ば強引に舌を絡め取る。
初めて他人の熱を感じてメルディの身体はみるみる内に熱を帯び、せめて息をさせてと身体を反らして彼の舌から逃れようとするが、それすらも拒むように腰と頭を抱かれてしまった。
酸素が足りなくなった身体はピクピクと震え始め、あまりの息苦しさに瞳からは知らず涙が零れ落ちる。
伝い流れる涙を指で頬に塗り付け、メルディの唇から銀糸が伝う頃になってやっと、ハミルトはメルディから唇を離した。


「可愛い」


足りなかった酸素を取り込もうと必死に呼吸を繰り返すメルディに、ハミルトはこれ以上に愛らしく愛しいものなど見たことがないというように『可愛い』を繰り返す。
真っ赤に染まった彼女の頬には幾筋もの涙の跡が残り、その上をまた新たな涙の球が走って路をつくっていた。
そんなメルディの表情がまた愛しさを募らせ、この上なく自分を追い立てる。


「ふぅっ、んっ!!」


たまらず首筋に噛み付いたハミルトに、メルディは甲高い嬌声を上げた。
背筋を這うゾクゾクとした何かに追い立てられ、身体は無意識に開いていく。


「凄、可愛い声」

「やっ、言わないでよぉ」


今まで知る事も無かった彼女の声に、思わず本音を漏らして顔を赤く染めてしまうハミルト。
なんでハミルトが赤くなるの?と咎めるようにメルディが彼を睨んだ。
しかしそんな視線でさえも今の2人には身体の距離を縮めるだけのもので、結局彼女の細い首筋に紅い花を咲かせるだけの結果に終わったのだった。


「メルディが凄く大事だ」


ツツ、と首のラインをなぞるように舌を這わしていたハミルトは、メルディの耳元に吐息混じりに囁く。
その言葉の中に秘められた甘やかさや感情は果てなく底無く優しく、かといってただそれだけでない男性としての強さや欲までもが入り混じっていたから、それを直に受け止める形になったメルディは思わず声無き声で叫んでしまった。
止まっていたはずの涙が再び零れだし、先程の路を辿っていく。


「お願いだ。全部俺にくれないか」


ヒクヒクと身体を揺らすメルディの耳に囁くと、彼女はおずおずと顔を上げて自分の瞳を見つめ返してきた。
水滴で潤った瞳がキラキラと光る様はどんなものよりも綺麗だと思う。


「は、ハミルト」

「ん?」


名前を呼ばれ覗き込むようにしてメルディの口元に耳を近づければ、彼女はごくごく小さな声でこんなことを言うのだった。


「メルディ、ハミルトに全部あげたいの、全部。でもメルディは初めて、だから・・・・・・」


もう良いよ。と真っ赤になったメルディの言葉を唇で遮って、彼は再びメルディの首筋に花を咲かせた。
少しずつ、ゆっくりと、彼女の身体を優しく舌でなぞっていく。
鎖骨の辺りには大輪の花を咲かせて、気が付けば彼女の寝具は役を為さなくなっていた。


「細いな、メルディは」


闇に浮かび上がる彼女の肌を指で優しくなぞりながら、思った以上に折れそうに細い腰を抱きしめる。


「ハミルトがカラダはやっぱり男の子」


ただひたすら彼から与えられる口付けを受けていたメルディは、彼が自分の肌を優しくなぞって言った言葉に少し笑みを取り戻した。
そして自分も同じように彼の肌をなぞりながら小さな声で呟く。
そんなメルディの言葉に不意をつかれたのかハミルトは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに優しい何時もの瞳に戻って、彼女の指が自分をなぞるのを眺めていた。


「ハミルトはいつもメルディがこと大事にしてくれる。メルディが寂しくないように、悲しくないように。―ありがと」


笑みが戻ったはずの彼女の瞳に、みるみる内に涙が溜まっていった。
『ありがとう』と言った彼女の声は、少し震えて掠れている。
額のエラーラもゆらゆらと色彩を変えて、彼女の複雑な心の内を端的に表してはくれなかった。


「メルディが大事だ。こんなに誰かを大切に想ったことなんて無い」


触れ合う肌から何かとても大事な何かが分かるような気がして、彼女の腰に回していた腕に更に力を込めて抱き寄せた。
ハラハラと涙を零すメルディは、今まで見たことのない表情をしている。


「メルディ、愛してる」


思わず口をついて出た。
細い身体も、綺麗な涙も、繊細な声も、溶けた宝石のような瞳も、シーツの上に広がる絹の髪も、吸い付くような肌も、全部全部、彼女を形造る全てが、彼女が持っているその全てが愛しくて、自分まで泣きそうになった。


「愛してるよ。メルディ」


どうして今まで言わなかったのだろう。
思えば、彼女に『愛している』と伝えたのはこれが初めてではないだろうか?
こんなにもメルディの事を想っているのに、こんなにも大事で、可愛くて、その髪の1本でさえも手放したくないほど強烈に想っているのに。


「ハミルト」


メルディの声に呼ばれ確認するように彼女の顔を覗き込むと、もはや彼女の瞳は涙に支配されてしまい、その瞳には何も映らないのではないかと思わせるほどだった。
それでも自分の肌をなぞっていた指先は、ふるふると震えながら頬を撫でようとしている。
震えている指先を握り締め、その指先に唇を落とすと、メルディの唇が僅かに動いた。


「ハミルト、好き」

「っっ―――」


今度こそ耐え切れるはずもなく、ハミルトの瞳からも大粒の涙がこぼれ落ちた。
メルディの頬に落ちた涙が、彼女の涙と混ざり合い溶け合ってシーツに染み込まれていく。
抱きしめている腕にこれ以上の力は入らないのに、それでもまだ足りないと思った。
だからさっきよりも強く、ありったけの想いを込めてメルディの唇に自分の唇を重ねた。
そんな想いを彼女も感じとってくれたのだろうか、ぎこちなかった彼女が、自分の想いも受けとって下さいというように唇を開いた。
言葉では足りないから、抱きしめるのでも足りないから、口付けでも足りないから、だから全身で伝えようとするのだと、初めて2人は知ったのだった。


「あっ―――!!」

「メル、ディ」


少し苦しいのも、痛いのも、お互いを感じて気持ちを確かめ合う為だ、きっと。


「あっ、んぅっっ」

「メルディ、メルディっ」


こんなに切ないのも、こんなに嬉しいのも、こんなに心地良いのも、全てはお互いの想いを通わせる為。


「ハミルト、メルディ、も、ダメ!あ、やぁっ・・・・・・!!!!」

「メルディ、!」


こんなに愛しいのを、確かめ合う為なのだろう。



小さな寝息を立てるメルディを、ハミルトはこの上なく優しい表情で見つめ続けた。
涙の跡をそっと拭って、顔にかかる髪を払いのけてやると額と頬に口付ける。
そうしてやっと、彼も彼女の隣で瞼を閉じた。
程なく彼の寝息が聞こえてくると、隣で寝ていたはずのメルディはそっと起き上がる。
彼がしてくれたのと同じように、額と頬に口付けて、音を立てないように細心の注意を払って着替えた。
そうしてもう1度彼の元へそっと近づくと、今度は唇に想いを移した。


「いってくるな。何処にいたってメルディが想い人はハミルトだけよ。愛してるよ」



本当に小さな声で、彼の耳元に囁いて部屋を出たのだった。


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