※ハミルト生存ルート捏造


ずっと一緒だった。
辛い時も、幸せな時も、泣きたい時も、喜びの時も、ずっと一緒だった。


「メルディ、もう良いのか?」

「はいな!これで全部!!やっと終わったよ~」

「そうか。じゃあ少し休憩にしよう」

「ワイール!ありがとなハミルト、おかげで予定より早く終わりそうよ」


ハミルトは今日、メルディの引っ越しの手伝いに来ていた。
先程やっとメルディの荷物を新居に運び入れ終わった所なのだが、今からまだこの荷物を解いて整理しなくてはならない、先はまだまだ長いように思われた。


「そうか?これを全部ほどいて片付けるんだぞ」


1番広いリビングに運び込まれた彼女の荷物は、裕に30箱を越えている。
これらを完全に片付け終えるにはかなりの時間が必要だろう。


「ダイジョーブ!こんなのあっという間に終わるよー」


ニコニコと言う彼女に何も言えなくなってしまう。
彼女にはこの荷物の山が見えていないのだろうか?


「・・・・・・」

「そだ、ハミルト仕事は行かなくて良いのか?」


自分の引っ越しの予定がたった時、彼は仕事を半日休んで手伝いに行くと言ってくれたのだ。
時間はそろそろ昼だ、彼も仕事に行かなくてはいけない時間だろう。


「さっきサグラに会って、今日は休んで良いと言ってくれたんだ」

「バイバ!ごめんな、メルディ、ハミルトが仕事の邪魔したか?」

「違うよ。サグラは、その」


心配になってそう問うと、彼は途端に何か言い難そうにして口をつぐんでしまう。


「なにか?」


彼がこんな風に口を閉じてしまうなんて珍しい。


「――って」


暫くしてようやく何か言ったようだが、その声は蚊の鳴くような声でちっとも聞こえなかった。


「???聞こえないよー」


そう言っても、ハミルトは顔を真っ赤にして殆ど口を開かずにゴニョゴニョとしている。
額のエラーラも何だかハッキリしない色をしていて、メルディは思わず彼の腕をしっかりと掴んでガクガクと揺さ振ってしまった。


「い、いや、だから」

「なんだよー、メルディには言えない事なのか~?」


あまりにも彼がハッキリ言ってくれないものだから、メルディは少し拗ねた声を出し始めてしまった。


「ち、違う!だから、その」


メルディに滅法弱い彼は、そんなメルディの様子に慌てて否定の言葉を口にする。


「一緒に住むんだから手伝ってやれって、嫁さんの手伝いはするもんだ、って」

「!!!」


そうなのだ、今回の引っ越しはメルディとハミルトの新居へのものなのだ。
彼の荷物は既に全部運び込まれていて、今日がメルディの荷物を運び入れる日に決まっていたのだった。


「嫁さん。メルディまだハミルトと結婚が約束してないよ~////」

「・・・・・・/////」

お互いに真っ赤になって俯いてしまう。
そりゃ目の前にいる人と夫婦になれたならどんなに幸せだろう。既にそんな気になっているのも事実だ。
今回の同棲の話だって、何もガレノスや周りの人々に進められたからという理由だけで決めたわけではないし。
でもまだ早いと思ってお互いに核心に触れるのを避けてきたのに。


「メルディ」

「な、なにか?」


お互いの声が上擦っているのに気付いて、なんだか余計恥ずかしくなってしまう。


「う、その、今まで敢えてその話題には触れて来なかったんだが」

「は、はいな」

「メルディはインフェリアとセレスティアを行き来して、何かとてつもなく大きな事を成し遂げたばかりだろう?ましてやこの間アイメンに帰ってきたばかりだ。空にあったインフェリアが無くなったのと関係しているんだろうって事は何となく感じてる。だったら余計今のメルディには休息が必要なんじゃないかと思ったんだ。だから今は余計な事は考えずにのんびり出来るように、引っ越しも、メルディが寂しい思いをしないように、俺に出来る事があるなら1番近くで支えになってやりたいって、そう、思って。でも、結婚のことは、メルディの心がちゃんと落ち着いてからにしようと思って何も言わなかった。でも俺は」


彼が息を飲む音が聞こえてきそうで、メルディは思わず小さく拳を握って体を固くしてしまう。
『俺は』と言った彼は、決心を固め直しているのか黙って俯いてしまっている。
しかもあまりに彼の体に力が入っているものだから、メルディは心配になってしまった。
これは彼の緊張をほぐしてあげようかと彼に声をかけようとしたその時


――ガバッ


「?!」


ハミルトは勢いよく顔を上げ、真っ直ぐに自分の瞳を見詰め


「俺は、メルディと夫婦になりたい。今までと同じように、メルディの隣で支えていってやりたい」


そう、真っ赤に染まった顔で言ったのだった。


それから数ヶ月後

「アイメンのアイドル的存在であるピンクパープルの髪の少女は、とうとう一人の男の元へ嫁いでしまった」

という嘆きが老若男女の間を駆け巡ったとか。


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