「痛いよー!」

「メ、メルディ?!大丈夫か?」

「はいな~、平気、ダイジョブだよ~」


わいわいと騒がしい台所。
今日の夕飯は体調の悪いファラを休ませてあげようと、キールを看病役に残しリッドとメルディが受け持つことにしたのだ。
元々そんなに料理が下手な方ではないメルディなのだが、体調を崩した彼女には舌に慣れた食事のほうが良いだろうとインフェリアのレシピを選んだのがこの騒ぎの発端になってしまった。
慣れないインフェリアの食材に、どうしてもその手は危なっかしくふら付いてしまう。
今もコンニャク相手に刃を滑らせて、人差し指に切り傷を作ってしまったところだったのだ。


「メルディ血が出てるじゃねぇか!!」

「え?バイバ!ホントだよ!大変大変、すぐ止血しなきゃ」


白い指先にプツリと膨らんできた赤いものに、メルディはワタワタと包丁を置いて絆創膏を探し始めた。
しかしその間に、指先の小さな赤い球はみるみる大きくなって指先から逃げ出そうとする。


「メルディ、指」

「へ?ひゃあっ!!」


ペロリならまだしも、パクリ。
リッドはメルディの指先を口の中に含み、彼女の指を赤く染めていたそれを舌で舐めとって満足そうな顔をする。
そんな彼の様子に真っ赤になって悲鳴をあげたメルディは、中々指を離してくれないリッドを見て益々顔を赤く染めてしまった。
そんなメルディを見て火がついたのか、リッドはニヤリと笑みを浮かべてさらにメルディの指に舌を這わす。


「なんかエッチだよぅ」

「んー、そうかもな」

「リッド、もういいな。メルディ恥ずかしいよ/////」


そうか~?と少し残念そうな顔をして、リッドは渋々彼女の指を唇から開放した。
唇にはまだ彼女の温かさが残っている。
メルディはといえば、ようやく離してもらった指を少し恥ずかしそうに眺め、探し出してきた絆創膏を未だ熱覚めやらぬ顔でかなり雑に巻いてから再び包丁を手に取って宿敵コンニャクに立ち向かおうとしていた。

しかし


「リッドがせいで指に力が入らないな・・・・・・」


さっきのリッドのせいで熱を帯びた指は、確かに自分のものであるのにどこか宙を浮くような感じで上手く力が入らないのだ。


「俺のせい?そんなことないだろ」

「あるよぉ!リッドはヘンなことするからメルディ指に力が入らない」

「変なことね~♪」


そんなどこか楽しんでいるようなリッドの態度にメルディは頬を膨らませて拗ねたような顔をする。
しかしそんな彼女の仕種が彼の悪戯心に火を付けてしまうのはもう明らかで、案の定リッドはメルディの膨らんだ頬を軽く付いて笑うと


「そんな顔すんなよ」


そう言ってメルディの唇を軽く指の腹で撫でた。


「今日のリッドはヘンだよ」

「そんなこと無いって、ただメルディが可愛いだけ」

「やっぱりヘンだよ」

「何時も言ってることだろーが」

「それはそだけど、でも」

「ん、ちょっとだけ沈黙」


そう言って彼女の唇に優しく触れたのはリッドの唇、思いの外熱くて驚いてしまう。
どうしていつもこの人の唇はこんなに熱いのだろう?


「ん、ファラが待ってるよ」

「そうだったな」


離れた唇から、ポロリと零れたそんな言葉。


(あー、もう少しだけ先までいきたいけど、そういうわけにもいかないか)


とりあえずこの場はこれだけで満足ということにしておこう。
そんな風に自分に言い聞かせて、隣の彼女を軽く抱きしめたのだった。


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